【バレエ物語】エスメラルダ全幕の見どころと作曲者・振付など

バレエ版エスメラルダについて

多くは赤い衣装を身に着け、タンバリンを片手に踊るエスメラルダのバリエーション(※1)発表会やガラ公演(※2)、コンクールなどで踊られることの多い演目です。バレエ経験のある方はほとんどの方がこの「エスメラルダのバリエーション」を踊ったり、見たりした経験があると思います。私も踊った事はありませんが、子どもの頃、タンバリンを持つと上級クラスのお姉さんの真似をして踊りながらタンバリンを叩いた事を覚えています。




しかし、このバレエ版エスメラルダは近年では全幕ものとして公演を行っているバレエ団は、日本・海外ともに少なく、モスクワ音楽劇場が上演を続けているようです。全幕ものを観たければ、現地に行くか、来日や国内での上演を心待ちにしているしかないのですが、ストーリーがあまりにも火曜サスペンスのような展開なので、あらすじをあらかじめ把握しておくことで、コンクールやガラ公演のエスメラルダのバリエーションを観た時に、楽しめるのではないかと思います。

※1バリエーション(ヴァリエーション):全幕もののバレエの一部で、プリマやソリストがソロで踊るパートの事。ほとんどが2分~3分と短く、コンクールや発表会等で踊られる。ヴァリアシオンとも呼ばれる。

※2ガラ公演:全幕ものではなく、様々な演目の1部分の踊りをいくつも踊る事。一つのバレエ団だけでなく、各バレエ団のプリマやソリストが集結して行う場合もある。

バレエ エスメラルダの原作と作曲者・振付師について

エスメラルダの原作は、ヴィクトル・ユゴーという作家によって書かれた「ノートルダム・ド・パリ」。原作での主人公は醜い外見で孤児の男、カジモドですが、バレエ版では容姿端麗なジプシーの女「エスメラルダ」が主人公となっています。

ヴィクトル・ユゴーはこの「ノートルダム・ド・パリ」を執筆した約30年後、現在もミュージカル等で人気となっている「ラ・ミゼラブル」を発表しています。

曲はバレエ音楽の作曲家イタリア人のチェザーレ・プーニ。もともと音楽の才能に溢れていたものの、なかなか売れずに妻子を抱えて苦労をしていたプーニですが、このエスメラルダの振り付け師であるフランス人のジュール・ペローとの出会いにより、彼の為にバレエ音楽を作り、名が広まるようになりました。チェザーレ・プーニによる作曲音楽は他にも、マリンスキー劇場の「ファラオの娘」などがあります。

振り付けのジュール・ペローは、後にロシアの帝立バレエ団で芸術監督となった人物で、エスメラルダの他には「ジゼル」や「パ・ド・カトル」の振り付けを行った振り付け家として、有名です。踊り子の絵を多く描いた画家のエドガー・ドガによる作品「ダンス教室(バレエ教室)」という作品に描かれている教師の男がジュール・ペロー。

普段、絵画として何となく見ていた作品も、こういった描かれている人物の背景を知ると面白いですよね。

このチェザーレ・プーニによる作曲と、ジュール・ペローの振り付けによって生まれたバレエ「エスメラルダ」。ロンドンのハー・マジェスティーズ劇場にて1844年に初めて上演され、大成功を収めました。その数年後、サンクト・ペテルブルグでエスメラルダを上演した際、後に数々の人気作品を振り付け師として生み出すマリウス・プティパがファビュス役として出演して出演しました。その後、この時出演していたマリウス・プティパが、ジュール・ペローからエスメラルダを引き継ぎ、再構成され、広まっていきました。

ちなみに、現代では一番有名な「エスメラルダのバリエーション」はこの古典の全幕エスメラルダには登場しません。全幕のタリスマンからヒントを得て、1980年代に作られたもので、ベン・スティーブンソンという振り付け師が振り付けたものとなっています。




バレエ「エスメラルダ」の見どころ

このように、振り付けがジューロ・ペローからマリウス・プティパに変わったことや、様々な時代背景もあり、エスメラルダはボリショイ版やプティパ版など様々に作り替えられ、それぞれ少しずつストーリーが変わっています。今回は、原作「ノートルダム・ド・パリ」に一番近いものをご紹介します。

~プロローグ~

舞台は15世紀末、パリのノートルダム寺院から始まります。貧富の差が激しく、また寺院が権力を持っていた時代、ノートルダム寺院には多くの浮浪者とジプシーが住み着いていました。その街に住んでいたのが、幼い子供を抱えた貧しい女グドゥラ。あまりの空腹から、寺院にあるマリア様の像の前で、赤ちゃんを抱いたまま生き倒れてしまいます。

そこへジプシーの一団が通りかかります。ジプシー達はグドゥラが死んでいると勘違いし、死者を悼み、残された幼い子供を連れ去ってしまいます。ジプシー達がその場を去った後、グドゥラは意識を取り戻しますが、その腕の中には愛する我が子の姿がありません。

グドゥラ居なくなった我が子を探しながら、半狂乱になってしまいます。

~第1幕~

時は16年後に移ります。

連れ去られた赤ちゃんは「エスメラルダ」と名付けられ、とても美しい女性へと成長していました。ジプシーとなったエスメラルダは正義感も強く、ある日、寺院に迷いこんで処刑されそうになっていた、詩人のグランゴールを助けました。自分を助けてくれた、美しく優しい娘エスメラルダに、グランゴールは一目で恋に落ちました。

しかし、エスメラルダに目を奪われたのはグランゴールだけではありません。その時、エスメラルダを見ていた寺院の聖職者であるフロロもまた、彼女に一目惚れをしてしまいます。さらに、この寺院で鐘付きつき役をしているカジモドもまた、いつも優しくしてくれるエスメラルダに恋をしていますが、自分の醜さに失望するばかり。

権力もあるフロロは、何度もエスメラルダに迫りますが、エスメラルダは断固として拒否をし続けます。なんとしてでもエスメラルダを自分のものにしたいフロロ。ある夜、フロロは鐘つきのカジモトにエスメラルダを拉致するように命じます。エスメラルダに恋をしているカジモドですが、一番の権力者であり自分を広い育ててくれたフロロの命令に背く事は出来ず、エスメラルダを拉致する作戦を実行します。

ですが、その作戦は失敗に終わります。それどころか、エスメラルダの悲鳴を聞いて駆け付けた軍隊によって、カジモドは捉えられてしまいます。それでも心の優しいエスメラルダは、そんな自分を拉致しようとしたカジモト助けてあげるよう、軍隊に懇願しました。この時の軍隊調であったフェビスも、この優しく美しいエスメラルダに恋をするのです。そしてエスメラルダもまた、フェビスに恋をし2人は愛し合います。そんな2人の姿を見たフロロはまた嫉妬に荒れ狂うのです。

~第2幕~

ようやく誕生した1組のカップル。ここから二人の愛の物語が展開されるのかと思いきや、物語は更に悲劇へと展開していきます。

第2幕の舞台は、エスメラルダの恋人であるフェビスの婚約パーティー。ですが、フェビスの婚約の愛てはエスメラルダではありません。なんとフェビスには別の婚約者がいたのです。皮肉にも、恋人の婚約パーティーにエスメラルダはジプシーとして招待されてしまいます。嫉妬と悲しみ、いろいろな感情を抑えながらエスメラルダはグランゴールと共に踊ります。

そんなエスメラルダの姿に改めて、魅了されたフェビス。フェビスは自分の婚約パーティーが終わるとエスメラルダのものへ向かい、改めて愛を確かめ合います。

そこに黒いマントを着た謎の男がナイフを持って現れ、フェビスを刺し殺してしまいます、そのマントの男が嫉妬に狂ったフロロであることを見つけてしまったエスメラルダは驚きのあまり気を失ってしまいます。その後、カジモドが止めに来ますが、間に合わずフロロは逃げ出してしまい、駆けつけた衛兵に殺人未遂容疑者として間違えられ、捕らわれてしまいます。




~第3幕~

場面は牢屋へ変わり、捕らわれの身となったエスメラルダの前にフロロがやって来ます。フロロは、「自分のものになるのならば、処刑をとりやめここから出してやってもいい」と伝えますが、エスメラルダはその要望を拒否します。命を助けると言ってまでも自分を拒絶するエスメラルダにフロロは怒り狂います。

悲劇は続き、一命を取りとめた恋人のフェビスもまた、エスメラルダが自分を殺そうとしたのだと信じ込み、エスメラルダの前に婚約者と共に現れ、彼女への憎しみを伝えます。友人のジプシーやカジモド達が何とかエスメラルダを助けようと頑張りますが、力が及ばず処刑の日を迎えます。

愕然と処刑台へと向かうさなか、エスメラルダは彼女を探し続けていた実の母に出会います。16年越しの感動の再会を果たした親子でしたが、ようやく会えた我が子がこれから処刑されるという現状を知った母は、ショックからそのまま息絶えてしまいます。愛する恋人に信じてもらえず、実の母までも目の前で失ったエスメラルダは失望し、抵抗することもなく、あっさりと処刑されてしまいました。

悲しみに暮れるジプシー達と、鐘つき役のカジモド。カジモドがいる塔の一角にフロロがやってきます。フロロへの怒りと恨みでいっぱいのカジモドはノートルダム寺院の上からフロロを突き落とし、物語は幕を閉じます。

バレエ「エスメラルダ」のダンサー

バレエ「エスメラルダ」のストーリーはいかがでしたか?読んでいるだけでも、ぐったり疲れてしまう程の、恐ろしい悲劇の展開でですよね。バレエに出てくる王子様は、自分の愛する人を見間違えてしまったり(白鳥の湖)、婚約者がいるのに別の女性にプロポーズしてしまったり(ジゼル)残念な男性が多いのですが、エスメラルダに登場するフェビスもまた、かなりのゲス男ですね。

エスメラルダのダンサーはただ美しく踊るだけではなく、ジプシーとしての妖艶さや、愛するフェビスへの愛の表現、悲しみや憎悪などネガティブな感情を深く表現する点は、様々なバレエ作品の中でも難しい点です。観客はあらすじやおどりだけではなく、そんな演技力について注目してみるのも見どころの一つです。

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