【バレエ物語】ドン・キホーテの見どころ

バレエ版ドン・キホーテの物語

ドン・キホーテの物語は、もともとはスペインの人気小説が原作。各国で出版され日本でも日本語訳版が発売され、人気になった小説なのでバレエ版のドン・キホーテを観たことのない方にも馴染みのある物語ではないでしょうか。

原作ではドン・キホーテ(本名アロンソ・キハーノ)という男が主人公となり物語が繰り広げられていく長編小説ですが、バレエ版のドン・キホーテは原作物語の後半に登場する”キトリ”という若い勝気な女性が主人公となり、恋人の”バジル”との物語が中心に展開れています。

闘牛士が登場したり、酒場の場面があったり、赤を基調とした衣装だったりと、いかにも「スペイン」の物語という雰囲気が漂う、華やかでエネルギッシュなバレエ版のドン・キホーテ。男性が片手でパートナーの女性を高く持ちあげるなど技術的にも派手なパフォーマンスが多く、ユーモラスなシーンも多いので、何度観ても面白く、バレエ鑑賞が初めての方にもお勧めの演目です。




バレエ「ドン・キホーテ」の基礎知識

原作は、スペインのミゲル・デ・セルバンデス。スペインのお話ですが、初演はバレエの本場ロシアで、1869年にボリショイ劇場で上演されたのが始まりです。今から150年も前に上演されていたと思うと、バレエの歴史って深いですね。ちなみに、バレエ以外の、ミュージカルなどの公演では「ラ・マンチャの男」というタイトルがつけられています。

作曲家はロシア帝国バレエ団の舞踊音楽家であったレオン・ミンクス。オーストラリア出身ですが、ロシアで活躍した作曲家の一人で、”ドン・キホーテ”をはじめ、”パキータ”や”ラ・バヤデール”などの作曲も手がけた作曲家です。

そして、振付師はバレエ振り付けの重鎮マリウス・プティパ。彼がいなければ、今のバレエはないのでは?という程、バレエ界では偉大な人物で、現在のクラシックバレエの礎を築いたフランス人振付家です。バレエをご存知ない方でも聞いたことのある三大バレエと呼ばれる演目”白鳥の湖””くるみ割り人形””眠れる森の美女”も、このマリウス・プティパによって振り付けられました。現在も多くのダンサーやバレエ団から愛され、生誕や没後の節目の時期になると、ガラ公演(全幕ではなく、様々な演目の見どころの場面を集約したもの)や生誕祭等として特別公演が実施されています。

この二人のタッグにより生まれたバレエ「ドン・キホーテ」面白くないはずがないですよね!

バレエ「ドン・キホーテ」の見どころ

ドン・キホーテは、踊りや演出も派手でダイナミック。マイムも分かりやすいので、観ているだけでも十分楽しめますが、とは言っても言葉のないバレエ。事前にあらすじを抑えておくことで、当日の公演を10倍楽しむことが出来ます。

バレエ ドン・キホーテ~プロローグ~

物語はドン・キホーテ(本名アロンソ・キハーノ)の書斎から始まります。背の高い細身の男性がアロンソ・キハーノ。ラ・マンチャの郷士(ごうし)であるアロンソ・キハーノは大好きな騎士物語を何度も何度も読み繰り返すあまり、ついに現実と物語の区別がつかなくなり、自分自身を物語の主人公である遍歴の騎士ドン・キホーテだと、すっかり思い込んでしまいます。さらに、物語に登場する麗しきドゥルネシアというお姫様に想いを馳せ、近くに住む農夫のサンチョ・パンサを従え、ドゥルネシアに会うための旅にでるのです。

ちょっぴり太っちょで背が小さく、コミカルな動きをするのがサンチョ・パンサ。中世の騎士として、時代遅れな甲冑を身に着け、大げさに長い槍を持ったドン・キホーテと、鎧持ちとして駆り出されたサンチョ・パンサ2人の愛と冒険を求める、可笑しな旅の始まりです。




バレエ ドン・キホーテ~第一幕第一場~

場面が変わり舞台はバルセロナの街。小さな街の広場ではお祭りが行われ、多くの若者たちで賑わっています。そこに登場するのが、バレエ版ドン・キホーテの主人公キトリ。美人で元気いっぱいのキトリは、お友達も多くいつも大勢の友人の中心的な存在です。そんなキトリの恋人が、床屋のバジル。2人は誰しもが認める仲良しカップルです。公衆の面前でもラブラブの2人ですが、たった一人2人の交際を認めていない人物がいるのです。

キトリとバジルの交際を認めない人物とは、宿屋の主人であるキトリの父ロレンツォ。若い2人は父親が結婚を認めてくれることを願いますが、その願いはなかなか父親に届きません。父親の目を盗みながら、ラブラブする2人のシーンも微笑ましく、第一幕の見どころでもあります。

父ロレンツォが2人の交際を反対する理由はただ一つ、バジルの経済力です。娘の幸せのため(なのか自分の至福の肥やしのためなのか分かりませんが)には、あまりお金のないバジルではなく、お金持ちの貴族ガマーシュに嫁がせたいと考えているのです。しかし、このガマーシュ、お金はあるがなかなかの間抜けな男で、町中で笑いものとなっているほど。父親はガマーシュとの結婚を勧めてきますが、キトリは全く聞く耳を持たないどころか、反発心がつのるばかり。

ガマーシュもその気でキトリの顔を見る度に求婚してきますが、想いは届きません。ガマーシュのコミカルな演技と、キトリの気持ちの良い程の振りっぷりも私の大好きな場面の一つです。

第一幕から見どころは満載で、人気者のキトリとバジルを囲んで大盛り上がりの広場は、更にスペインらしい場面へと進んでいきます。物語の筋とはあまり関係なくなりますが、大勢のダンサーが扇子やタンバリンを持ち華やかに舞うセキジリアと呼ばれるスペイン舞踊。観客の気分も一気に高まる必見の場面です。そして、次に登場するのが、闘牛士たち。美少年のエスパーダを筆頭に踊り子のメルセデスと闘牛士たちが踊ります。赤いマントを待った男性ダンサーによる一糸乱れぬパフォーマンスも必見です。更に、闘牛士たちは、小刀を地面に突き刺し、メルセデスが巧に小刀をよけながら美しく舞います。イケメンのエスパーダとジプシーのメルセデス。このエスパーダはメルセデスを愛していますが、残念ながらメルセデスは家族をもつというしがらみに束縛されることを嫌う女性なのです。

(※バレエ団の演出によって、メルセデスは後半にのみ登場し、ここでは街の踊り子とされているものもあります)

圧巻のパフォーマンスが次から次へと繰り広げられ、すっかり観客が忘れていた頃、ドン・キホーテとサンチョ・パンサは広場に到着します。なんせ、その恰好が中世の騎士ですから、人々は唖然としながらも次第に面白がります。私たちが食事を楽しんでいる時に、武士の恰好した人が現れるような感じでしょうか。

そんな街の騒ぎは気にも留めず、愛し合うキトリとバジルは2人で踊り始めます。そこに割り込んできたのがドン・キホーテ。ドン・キホーテは、キトリこそここまで追い求めてきたドゥルネシア姫だと思い込み、求愛をしてくるのです。キトリは面白半分で、ドン・キホーテのお姫様ごっこに合わせ、からかっているかのように優雅にドン・キホーテと踊り始めます。

最後はバジルがキトリを取り返し、2人の踊りを再開します。

これだけ個性豊かな代わり物が集まっているので、食いしん坊のサンチョ・パンサがパンを盗み食いして、キトリの父ロレンツォに追い回されて転がったり、ロレンツォがサンチョ・パンサを懲らしめるつもりで、貴族のガマーシュの頭をパコっとしてしまったりと、広場は大騒ぎになっていきます。

この大騒ぎの中、キトリとバジルは父が結婚を許してくれないのならば、駆け落ちをしようと決意。若い2人は広場から姿を消してしまいます。

バレエ ドン・キホーテ~第一幕第二場~

場面はすっかり日が暮れ、夜になっています。2人の恋路を邪魔する者がいなくなったキトリとバジルは幸せいっぱいの時間を過ごします。ゆっくり語り合いたい2人でしたが、たどり着いた場所はジプシーの聖地。ジプシーたちは駆け落ちをしてきた情熱的な若い2人を受け入れてくれますが、2人の会話はジプシーたちに遮られ、情熱的な踊りが始まります。ここでもジプシーであるメルセデスの哀愁漂う踊りにも必見です。

そこに再び、キトリとバジルを追いかけてきたドン・キホーテとサンチョ・パンサが現れ、ドン・キホーテは相変わらず、キトリへの愛情を伝えるのです。

そこで、ジプシーたちは人形劇を披露してくれることになりますが、ここでもドン・キホーテ劇中の物語と現実の区別がつかなくなり、人形劇の悪役を倒さねば!姫を救い出さねば!と勘違いし、劇をぐちゃぐちゃにしてしまいます。

強風が吹き近くにあった風車の羽根が回りだすのをみたドン・キホーテの目には、恐ろしい怪物が暴れだしたように見え、槍を手に倒しにかかります。しかし、羽根に引っかかり、引き上げられ、たたき落とされたドン・キホーテは気を失ってしまいます。




バレエ ドン・キホーテ~第一幕第二場~

気を失ったドン・キホーテは素敵な夢を見始めます。ここまで追い求めてきた麗しく愛おしいドゥルネシア姫が自分のために美しい踊りを捧げてくれているのです。そこに居るのはドゥルネシア姫だけではなく、たくさんの森の妖精や、キューピットなど純粋で可憐な存在ばかり。ドン・キホーテは、その美しい姿に感動し、ついに善は悪に勝ったと確信しますが、ドゥルネシア姫の手を取り、幸せを噛みしめた瞬間、目の前の景色は消え去り、ドン・キホーテは目を覚まします。

これまでのスペインらしい華やかで豪華な雰囲気から一転、正統派バレエのような可憐で神秘的な場面になるので、白鳥の湖のような静かなバレエが苦手な方には、ちょっぴり眠たくなるかもしれません。ただ、さっきまでエネルギッシュなキトリを演じていたバレリーナが、一変して麗しく神秘的ドゥルネシア姫を演じるているギャップも見どころです。

さて、物語に戻ります。気絶したドン・キホーテを介抱していたバジルですが、キトリの父ロレンツォと貴族のガマーシュが追ってくる姿を発見し、2人は再び逃げ出します。ドン・キホーテは若い2人のため、逃げた方向と逆の方向を教えようとしますが、残念ながら空気の読めないサンチョ・パンサは正直に2人が逃げた方向を教えてしまいます。

バレエ ドン・キホーテ~第二幕第一場~

キトリとバジルは馴染みの居酒屋へ逃げ込み、隠れています。そこにはキトリの友人や闘牛士や美男子のエスパーダ、ジプシーのメルセデスの姿もあり、店内は賑わっています。

そこへ、サンチョ・パンサに方向を教えられて追いかけて来た父とガマーシュもやって来ます。父たちが来た事を知ったキトリとバジルは、メルセデスとエスパーダに隠れながら再び逃げ出そうとしますが、そこで父とガマーシュに見つかってしまいます。

貴族ガマーシュはキトリとの結婚を父ロレンツォへ承諾を求め、もちろん快諾。父がキトリとガマーシュとの結婚を祝福し、もうこれ以上逃げられない・・。

と思ったところに、マントをつけ、ナイフを持ったバジルが現れます。駆け寄るキトリを突き飛ばし「この裏切り者!愛する君といられないのなら、僕に生きている価値はない!」と言い、ナイフを胸に突き刺します。ここにきて、ロミオとジュリエットのような悲劇的な展開になりますが、ご安心ください。これは全て、バジルの策略。父ロレンツォを騙すための狂言だったのです。バジルの狂言に気づいたキトリもその芝居にのり、涙ながらに「せめてこの哀れな青年の冥途の土産に結婚を許してください」と乞いますが、それでも父はなかなか首を縦には振ってくれません。

そこへまた、ドン・キホーテとサンチョ・パンサが姿を現します。キトリがドン・キホーテに泣きながら助けを求めると、正義の味方である騎士として、2人の結婚を認めるよう父ロレンツォに槍をつきながら説得し、ついに父は2人の結婚を認めます。

父ロレンツォが認めた瞬間、バジルは生き返ります。父は頭を抱えますが、その場にいた友人やジプシーたちにより一気にお祭り騒ぎに。



バレエ ドン・キホーテ~第二幕第二場~

舞台は再び華やかな場面に戻ります。そこはついに結ばれたキトリとバジルの結婚式。父も愛し合う2人を最後は認め、ドン・キホーテとサンチョ・パンサもお祝いに駆けつけます。様々な祝いの踊りが踊られ、ガマーシュもみんなに慰められながら少しやけっぱちな踊りを披露します(バレエ団の演出によっては、登場しない場合もあります)

更にはキューピットも再び登場し、メルセデスとエスパーダも愛を確かめ合い、舞台は幸せが溢れだします。

ここで最後の見せ場となるのが、キトリとバジルのパ・ド・ドゥ。ダイナミックな振り付けに、愛し合う2人の情熱的な踊りを是非堪能して頂きたい場面です。

キトリとバジルの愛のキューピットとなったドン・キホーテは大勢の人々に感謝され、新たな冒険を目指し次の旅へと向かっていきます。

途中笑いが起こる唯一無二のバレエ「ドン・キホーテ」

ドン・キホーテだけでなく、サンチョ・パンサや父ロレンツォ、貴族ガマーシュなど、様々な個性豊かな顔ぶれが並ぶ物語。これらのコミカルな脇役勢が、奇妙なダンスやマイムで舞台を盛り上げます。ガマーシュの演技には、真剣なリハーサル中のダンサー達にも笑いが起こる程。

それだけでなく、主役のキトリとバジルの演技にも注目です。途中、父の目を盗んで、ラブラブしたり、ドン・キホーテを面白おかしくからかったり、更に、バジルはキトリ父ロレンツォに「良い人アピール」をするために、わざとロレンツォの財布を盗み、「落ちていましたよ!」と親切アピールする場面も。結局、直ぐにバレてしまい余計におこられるのですが。

バジルが狂言自殺をするシーンでは、多くの公演で観客から笑いが起こります(その真意は是非劇場で観てみてくださいね)観客が静まりかえることの多いバレエで、笑いが起こるのはこの「ドン・キホーテ」だけではないかと思います。

観ているだけで、元気になりハッピーな気持ちになれる演目です。

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